人の想いの残り滓を掃除するスカベンジャーとしての仕事がある。彼らの戦場は、肉を喪い空っぽになった「もぬけの殻」たちが沈澱した……まるで冥界のような大空洞「底の国」。 そんな異界へ迷い込んでしまった空巻ミル(そらまき・みる)24歳は、命からがら「殻」たちの間を潜り抜け、その先で「ソラゴト」と呼ばれる化物のひとつ「ダストワール(Dastoire)」と出会ってしまう。 雨の気配を身に纏う、カタツムリのような空飛ぶ悪魔。
程なくしてスカベンジャー集団のメンバーに助けられた涙ぽろぽろのミルだったが、ミルはダストワールを見たことでひとつの確信を得ていた。「母がここにいる/いた」。ミルはここに「かなしくも迷い込んでしまった」わけではない。「迷い込むことができた」のだ。そしてミルは、あの姿に見覚えがあった。 母・キクノの行方の手がかりを掴むため、ミルは集団に入れてもらえるように頼み込む。集団側も正直迷い込んだ一般人の対応に困っていたのと、喫茶店「ポントドレ」という表の姿を持つがゆえに人手が欲しいのとでそれを承諾することに。 元々やってたバイトは全然好きでもない仕事だったし、うーん、まあなんとかなるでしょ。
かくして空巻ミルの冥界お掃除・お給仕ライフが始まることになったのだった。 最初のミッションは、従える「ソラゴト」を捕獲すること。生身じゃどうにもキツいため、殻を着ないといけないらしい。喫茶店の制服みたいなものだって。そうかなあ。 着たいソラゴトか……そんなもの、もちろんヤツしかいなかった。絶対あいつがいい。あいつがいいよ~!! 先輩たすけて~!!
死者の残滓が溜まる、どこにあるのかわからない大空洞。喫茶店「ポントドレ」と扉1枚で繋がっている。 化物たちがまるでコーヒーカップの底に溜まった澱のようだから、とかつて店長が呼び始めた名前。
底の国に発生する化物。死者の残滓が集まって形を成した、肉を持たない存在。底の国をさまよい、命に引き寄せられて動く。 明確な意思を持たず、もはや誰でもない「存在の殻」のようなものなので、着て力を従えることができる……らしい。 彼らが底の国に溢れかえると現世にとってまずい、とは店長の談。底の国での「掃除仕事」とは、彼らを討伐することを指す。
店長が店長と名乗るゆえんであり、底の国に通じる扉を持つ現世での「表の姿」。 掃除仕事のメンバーは扱い上「店員」として雇われていることになるので、一部のメンバーを除き正しく「店員」として働いていることも多い。
ミルがその足跡を探している、ミルの母。店長はキクノのことを知っている。